猫は、ていねいにお礼をいうと、一文銭を拾いあげたよろこびのあまり 猫に鼠(ねずみ)に空たつ鳶(とんび) 河にゃ鵜(う)の鳥、鮎(あゆ)の魚 猫に鼠に空たつ鳶、河にゃ鵜の鳥、鮎の魚 と、歌をうたいながら帰って行きました。
しかし、歌の中には、大切な一文銭を落とすようなことをさせたので、河を渡してくれた犬のことは一言もはいっていません。 河を渡してくれた犬の有り難さを忘れてしまったのです。
この歌を聞いた犬は、猫の恩知らずと、たいへん腹をたてました。
それ以来、猫は何かひとつ忘れるくせがつき、犬は猫をみれば、そのときのくやしさが忘れられず、歯をむきだして追い回すようになった、ということです。
(阿武郡)
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