その日の夕方、弟が夕飯の支度に帰ってみますと、驚いたことに、夕飯の用意がちゃんとできあがっておりました。誰が用意してくれたのかと、不思議に思った弟は、あくる日の夕方、前の日よりも早く帰ってきて、そーっと家の中の様子をうかがいました。 ご飯やみそ汁のおいしそうなにおいがしましたが、やはり誰の姿も見えません。
弟は兄にこのことをすっかり話すと、そのまたあくる日の夕方、兄弟そろって家のそばの柿の木にのぼり、様子をじっとうかがいました。
しばらくすると 「お姉さん、夕食の支度をはじめましょうか」 という声がして、おいしいみそ汁のにおいと、きれいな娘の歌声が流れてきました。 「いったい、誰じゃろう」 兄弟は急いで木からおり、そーっと家の中にはいってみますと、二人の美しい娘が、流しもとでせっせと働いておりました。
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