むかし、むかし、ある山里におじいさんと娘が住んでおりました。
おじいさんの田んぼは、家からずっと離れたところにあり、毎日山道を通ってその田んぼで働いていました。
ところがある日のこと、不思議なことがおっこったのです。 それは、田んぼに苗を植えてから数日後に、田んぼの水がすっかりなくなっていたのです。 今までにこんなことは一度もなかったことです。
おじいさんは娘と二人で、山の田んぼへせっせと水を運びました。 山の下の堤から田んぼまで水を運ぶのは大変な仕事でした。
二人は毎日、毎日続けましたが、とうてい間にあいません。
疲れたおじいさんが、田んぼのあぜにしょんぼりと座っていると、一匹のかっぱがあらわれて、おじいさんに語りかけました。
「おじいさんや、いったい何をそんなに沈んじょるんかいの」
おじいさんは答えました。
「この田をみんさいや、はよう水を入れんけりゃ枯れてしまう。誰か水を引いてくれんじゃろか、お礼にゃなんでもやるんじゃが」
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