むかし、むかし、吉敷(よしき)郡の嘉川(かがわ)という宿場に、欲の深い夫婦が宿屋を営んでおりました。
しかしそのわりにはもうからず、夫婦は番頭や女中たちに小言ばかりいっていました。
そうしたある夏の日の夕方のことです。 客引きに出ていた番頭があわてて帰って来て 「今、えろう景気のいい客人を七人もおつれしました」と、にこにこ得意顔で申すのでした。
表を見ると、身なりのよい客人たちが着いたばかりのところです。
「何でも宮島様へのお礼詣り(おれいまいり)じゃそうで、たんまり銭子(ぜにこ)はあるから、ええ部屋に通してくれとおっしゃるのです」
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