客人たちは「空腹じゃで、一刻も早う、それで頼みますじゃ」と、機嫌のよい返事をしてくれました。主人はほっと安心し、すぐさま帳場にいってみょうが料理の指図をしました。
「うまい具合にいったわい」と、欲の深い夫婦はわくわくしながら互いに顔を見合わせて、うなずき合いました。
その翌朝、客人たちはまだうっすらと暗いうちに、支度もそこそこに、たって行きました。
客人を送り出して、みんながほっとしていたころ「忠助や、忠助や」呼ばれて番頭の忠助が主人の前にかしこまると「あれだけみょうがを食べりゃ、さいふの四つや五つぐらいは忘れていったに違いない。早う座敷を見てくるんじゃ」主人にいわれて番頭は、奥の座敷へ飛んで行きました。
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