聞いて、宿の主人はとたんにほくほく顔。番頭に座敷へ案内させると、女房を呼んで相談しました。
「今夜の客は、えろう持っとるそうじゃで、何かごっそりとつかわせる手はないもんかいの」 というと、女房は「そうそう、みょうがをたくさん食べると、もの忘れをするということじゃ。みょうがのごちそう責めで、客人のさいふを忘れさせることにすりゃええじゃないかいの」といいました。
すると主人は、奥の座敷へ飛んで行き 「手前ども自慢の暑気払い(しょきばらい)の料理“みょうがの重喰い(かさねぐい)”というものを差し上げることにいたしとうござります」と、うまいこと挨拶しました。
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